- 訪問診療を始めようと思ったきっかけはなんですか?
- もともとは消化器内科医だったんですけど、実は医学部に入る前から「緩和ケア」に関心があったんです。当時はまだ緩和ケアという分野自体が珍しかったんですが、病院に勤務していた頃、入院されている患者さんが「家に帰りたい」と言っても、制度や受け皿が整っていなくて、希望を叶えてあげられなかった経験がありました。その時に「自宅で最期を迎えたい」という思いを支えられる医療がしたいと強く感じて、訪問診療の道に進みました。

- 人生会議はどうして大切なんでしょうか?
- 延命措置など本人が望まない医療を避けられたり、家族の後悔を減らし、医療スタッフも緊急時の判断に迷いが少なくなります。
以前担当した男性の患者さんで、ご家族に「お父さんはどんな方でしたか?何が好きでしたか?」と聞いたんです。すると「時代劇が大好きだった」と教えてもらえたので、ご家族みんなでテレビで時代劇を流しながら最期の時間を過ごされたんですね。ご本人もきっと安心されたと思いますし、ご家族も「お父さんらしい時間を過ごせた」と感じておられました。こうやって、本人の好きなものや大事にしてきたことを知っておくことで、最期の時間が充実したものに変わるんです。自分の希望や価値観を事前に話し合っておくことは、本当に大切だと思います。
- 人生会議はどんなタイミングでするのがいいのでしょうか?
- 人生会議のタイミングって、実は「元気なうち」が一番いいんです。でも、なかなかみなさん元気な時には「まだ早い」と思われがちで、話し合うきっかけが少ないんですよね。
だからこそ、普段の会話の中で「自分はこれが好き」「こういうのは嫌だな」とか、ちょっとしたことでもご家族や身近な人に伝えておくのが大事だと思います。お正月や誕生日など、家族が集まるタイミングで「もしもの時はこうしてほしいな」なんて軽く話してみるのもいいと思います。
私たち医療・介護スタッフ側も、連携が重要だと思います。患者さんやご家族は、話しやすい人に悩みを打ち明けます。看護師やヘルパーなど身近にいるスタッフがどんな希望を持っているのか話を聞いて、職種間の情報共有やコミュニケーションを進めていくことが、よりよいケアにつながると思います。

- 県民のみなさんへのメッセージをお願いします。
- 「人生会議=終活」みたいに重く考えずに、「自分らしく生きるための話し合い」として前向きに捉えてほしいなと思います。明日が当たり前に来るとは限らないからこそ、今のうちに自分の好きなことや大事にしたいこと、逆に「これは嫌だな」ということを、ぜひ身近な人に話してみてください。私自身、家族には「唐揚げが大好きだから、もし施設に入っても差し入れてね」とか、伝えていますから(笑)。

